Q3-2:ロジャーズの実現傾向『ア・ウェイ・オブ・ビーイング』
A3-2:お答えします。
今日はロジャーズ晩年の著作『ア・ウェイ・オブ・ビーイング』の中で示されたものをご紹介します。(「カール・ロジャーズ カウンセリングの原点」諸富祥彦著、角川選書より)
「ありとあらゆる生命体は、自らの可能性を実現していくようにできている。(略)内的な刺激があろうとなかろうと、環境が好ましかろうとなかろうと、生命体の行動は自らを維持し強化し再生産する方向に向かっている。これが、私たちがいのちと呼んでいるプロセスの本質である。(Rogers,1980)」
この世におけるすべてのいのちあるもの、すべての生命体は、自らに与えられたいのちの働きを発揮して、よりよく、より強く生きようと定められている、というのである。
例としてロジャーズは、彼が少年時代に見た、小さな窓しかない地下室の貯蔵庫に入れられていたジャガイモを引き合いに出す。
「(略)この悲しいきゃしゃな芽は、窓からもれてくる薄日に届こうと、60センチも90センチも伸びるのです。逆境にあってもそれら(ジャガイモ)の芽は成長しようともがいているのです。(中略)おそろしく歪んでしまった人生を生きているクライアントと面接している時、あるいは、州立病院に戻ってきた患者と面接している時、私はよく、あのジャガイモの芽を思い出します。あまりにひどい状況を生きてきたために、これらの人々は異常で、歪められ、人間らしくない人生を展開させてしまったひどい状況にいます。けれどもその基本的な志向性は信頼することができるのです。彼らの行動を理解する手がかりは、もちろん自分に可能なやり方に限られますが、成長と生成に向ってもがいているということです。健康な人間には奇妙で無駄と思えるかもしれないけれども、その行為は、生命が自己を実現しようとする必死の試みなのです。この潜在的な建設的傾向がパーソンセンタード・アプローチの基本なのです。(Rogers,1980)」
晩年のロジャーズは、さらに「より広い視点から見た形成的傾向」として宇宙そのものについて語る。「この宇宙には、ある形成的傾向が働いていて、しかもそれはこの世界のあらゆるレベルで観察できる」という考えをより根本的な仮説として提示するのである。つまり、自らを維持し実現し強化する方向に向かっていく実現傾向は、「生命システムの傾向であるばかりでなく、私たちの宇宙に存在する強力な形成的傾向の一部であり、それはあらゆるレベルで顕現している」と考えるようになったのである。(Rogers,1980)
結びのほうに著者の意見がありましたので、紹介します。
これまでロジャーズの人間論を見てきたが、いかがだろうか。ロジャーズの人間論が「楽観的」「性善説」「人間に成長の力がある」などといった平板なものではないことがわかっていただけたのではないだろうか。
いかがでしょうか?
私が最初にCDAの養成講座で聴いた「人間はいくつになっても成長する」考えから、ロジャーズの「この世におけるすべてのいのちあるもの、すべての生命体は、自らに与えられたいのちの働きを発揮して、よりよく、より強く生きようと定められている。」そして、少年時代のジャガイモの話から「...異常で、歪められ、人間らしくない人生を展開させてしまったひどい状況にいます。けれどもその基本的な志向性は信頼することができるのです。」後半の「その行為は、生命が自己を実現しようとする必死の試みなのです。」の意味は合格した人、再チャレンジされる人にはキャリアコンサルタントの誇りと大きな役割を担っていると感じました。私もブログ「キャリアコンサルタントへの道を歩いて」に繋がるよう頑張ります!