Q4-4:キャリアコンサルタントの展開力について教えて?
A4-4:キャリアコンサルタントの展開力についてお応えします。
これまでクライエント中心療法について書き続けてきましたが、今日は展開力について考えて見たいと思います。
私をこれを話を回す力、または話を進める力を展開力と思っています。
名司会者の話を聞いてみますとどんな話下手な人(ゲスト)でも、上手に相手に話をさせているシーンがあります。
受け止めたり、要約したり、相手の一番話したいことを話の筋に添って話を展開させていますね。
では、ロールプレイではどうするのか逐語録にして追ってみます。
プロフィール:山本武(55歳)、妻(53歳)、二人暮らし。二人の子供は既に自立
大手の電機メーカーに勤務し33年
<序盤>
CC:こんにちは、キャリアコンサルトのXXと申します。
山本様、今日はどのような相談で見えられましたか?
CL1:私は電機メーカーに勤務してもう33年になるんですね。
で、今55歳ということでね、あと5年で定年退職を迎えるんですよ。
そのことを考えるとね、最近、不安でしょうがなくてですね、
いろいろ相談したいなと思って参りました。
CC1:山本様は、電機メーカーで33年勤務されているのですね。
今55歳であと5年で定年退職をお迎えになるんですね。そんな中、最近不安でしょうがないと。
最近不安とは何かあったのでしょうか、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
ここまでのシーンを振り返ってみましょう。
出足はとても大事です。CCtはクライエントの気持ちを受け止め、伝え返しています。
この出足をしくじるとガタガタと崩れ信頼関係が築けません。
この先二度と挽回できないと思ってください。
さて、話の筋(来談目的)はどちらでしょうか?
①「あと5年で定年退職を迎える」
②「最近、不安でしょうがなくて」
55歳の年齢を考えると①の定年退職のことでしょう。
しかし、ここで問うべきところは②の最近不安という感情でしょうね。
最近不安とは何かあったのでしょうか、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
CC1ではこれを出して展開させていますね。これが展開力です。
いかがでしょうか?
では次のシーンに移りましょう。
CL2: はい。先月会社主催のライフプランセミナーを受けたんですね。
そこで、同期の連中が集まってきたんですよ。
で、まあ久しぶりだったので、10人ぐらいでランチョンミーティングしたんですね。
結構ね、皆さん先々のことを考えてね、もう実際行動に移しているんですよ!
その時、「山本お前これからどうするんだ?」なんて聞かれたときにね、私は全然答えられなくて、
それから不安が募ってきたなぁ、なんて思っています。
CC2:山本様はライフプランセミナーに参加の際、同期の方とお話になって皆さんが先々のことを考えて
行動に移されていると聞いて、同期の方からどうするんだと問われ全然応えられなかった
・・・それで不安が募ってこられたのですね。
同期の方々は、例えばどういうようなことをおっしゃっていたんですか?
ここでもCCtは要約して受け止めていますね。
そして、不安が募ったのは同期の人と比べCLが全然将来のことが語れなかったことでしょうね。
では同期の人は何を言ったのでしょう?CCtはその場のシーンがイメージできるように尋ねていますね。
同期の方々は、例えばどういうようなことをおっしゃっていたんですか?
これがCCtの展開力だと思います。
では次のシーンに移りましょう。
CL3:私と割と仲の良い同期の彼はね、役職定年で彼は一足先に部長職は解かれ、
「これから大学院へ行って経営の勉強したりするんだ」っていうんですよ。
いろいろ聞くとね、中小企業診断士の資格は既にとっていてね。
定年退職後は経営コンサルタントを目指しているっていうんですよ。
CC3:仲の良い同期の方は、既に定年退職後のビジョンが明確になっていらっしゃる。
今は役職定年になって大学院で勉強をやり直したり・・・
それをお聞きになって、どう思われましたか?
ここはよくあるシーンですが、この辺りのCCtは要約が良いし、促しも良いですね。
そして、CLの思いを深く尋ねている展開になっています。
さて、展開力の続きです。
CL4:もう全然「先を越されたーっ」ていうような感じでね、「すごいな、こいつって!」。
それから、自分は全然考えてきていないじゃないかって思ってね、
不安が募ったんですよね。
CC5:「先を越された」というような感じ・・・遅れをとったような感じがして焦りから不安が募ったのですね。
山本様も、何か目標を定めて準備したいとお考えですか?
ここも基本通り受け止めて、CLにこの先のことを思い切って問って展開を図っていますね。
これを自己探索の支援と言います。
CL6:私は、全く仕事人間でやってきてね。趣味もないし・・・
CC6:仕事人間ですか?・・・今はどのようなお仕事をされているのですか?
この辺りで今の仕事が何なのか振り返っていただいています。
33年のキャリアを聞くシーンは必ずありますので、忘れないでください。
これも自己探索の支援ですね。
<中盤>
CL7:私の仕事ですか・・これまでも今も経理的な仕事をね、
もうずっとやってきたんで、結構うんざりしてましてね。
CC7:経理的な仕事は、うんざりされている・・・。
どうしてうんざりされておられるのでしょうか?
「うんざりしている」感情にフォーカスし少し深掘りしていますね。
CLの思いを 「一致の姿勢」で聴いています。
CL8:そうなんですよ、経理畑でいて、結構こき使われてね。
だから、51歳のときに人事から「再雇用受けませんか」言われたときは、
「いえ、もう結構です」って、その時は即答しました。
CC8:「こき使われた」と感じていらっしゃるんですね。
何かそう感じるようなことがあったのですか?
今度は「こき使われた」感情にフォーカスして問っています。
CLの思いを 「経験の再現」して展開しています。
CL9:日本って災害が多いですよね。
うちは電機メーカーなんで、あちこちに工場を地方に持っているのですよ。
そういうところが災害ね、地震、豪雨、積雪とかで工場がストップすると、
相当損害が発生するんですね。
そういう時は役員から休みだろうが夜中だろうがね、もう矢の催促でね。
経理としては、「とにかく現場と掛け合って損害の見通しを立てろと資金が必要なら、
銀行に掛け合ってすぐはじいておいてくれ!」っていってね、
「とにかく調査しろ」ってね、そんなことが結構あってね。
それも来月役職定年で、気が楽だなーなんて思ってますけどね。
CC9:山本様は、災害があるたびに役員からの要求に応えられ、頑張って来られたのですね。
先ほど51歳のとき再雇用を断わられたのは何か理由があるのですか?
CL8で言ったことを忘れないで「再雇用を断わった」理由を問って展開しています。
CL10:私は結構経営者と近い立場にあったと思っています。
・・・人事から再雇用の話があった時に、役員として取り立てはないなと確信したんです。
心の底ではひょっとしたらと期待していたのかも知れませんね。
それで、先が見えなくなってしまったのでしょうね。
CC10:将来は役員として活躍できることを期待されていたのですね。
その道が断たれてしまって、定年退職後が見えなくなってしまったのですね。
(間)山本様はこれまでにやりたかったこと、やり残したことはありませんか?
もう一つの主訴が見えてきましたね。
ここまで見えてCLへの問いは有効です。
<終盤>ここからは最後まで流してみましょう。
CL11:・・・やりたかったこと。やり残したことですか。
・・・そうですね、入社当初は人事関係の仕事を希望してたんですよ。
人と関わる教育や困った人に相談のるような仕事ですね。
CC11:人と関わる教育や困った人に相談のるような仕事ですね
どうしてそう思われていたのですか?
CL12:大学時代は心理学の勉強をしていて、臨床心理士に憧れた時期もあるんですよ。
でも、大学院に通って資格をとっても職があるのか将来に自信がもてなかったし、
今の会社で内定を貰って、志望は人事課だったんですが、経理課に配属されて、
33年が経ってしまいましたね。CC12:大学時代は臨床心理士に憧れていらっしゃったのですね。
同期の方のように学び直す気持ちはおありなんですか?
CL13:確か臨床心理士は通信制の大学院へ2年通えば受験資格は取れるんですが、
資格は取れたとしても、私はこれまでお金と数字しか追っかけてきてこなかったし、
キャリアはまったくないですね。CC13:専門的なキャリアはないかも知れませんが、これからでも遅くないし、
33年間の中で多くの人と関わって会社のために尽力されたのではありませんか?CL14:そうですね。子供も自立したし妻も元気だし、贅沢しなければ何とかやっていけると思います。
これからは社会のために尽くしたい気持ちが湧いてきました。
でき過ぎたロールプレイですが、CLにしっかり寄り添って展開していますね。
CLが気づきはじめ少し変化が現れてきましたね。
これを行動変容といいます。
是非、参考にしていただければと思いブログにアップしました。
いかがでしょうか?